シガだねレポート|食の力で滋賀県をブランディングするプロジェクト『シガだね』

シガだね
レポート

CATEGORY | 滋賀

新たな家族経営の形。【前編】/ hashibafarm : 橋場芳秀さん(35)

2021.03.01

writer | シガだね編集部

新たな家族経営の形。【前編】/ hashibafarm : 橋場芳秀さん(35)

今回お話をお伺いしたのは、
近江八幡市、”hashibafarm” の橋場芳秀さん。

実は、今現在『近江牛料理』を商品化中と言うこともあり、
この機会に近江牛が育つ場を実際に見せて頂こうと言うことに!

前半と後半の二回に分けて
”hashibafarm”さんの魅力をお届けしていきます。

体作りは、食べるものから。

橋場

まずうちは、肥育農家と言って、子牛を買ってきて育てて出荷する
というものです。他にも繁殖農家というのがあって、基本的には
お母さん牛から子牛を産ませる。それをうちみたいな肥育農家が買うんです。
一貫農家というのが、それを全部やる農家さんですね。

子牛はどこから?

橋場

今は、全部宮崎県から子牛を仕入れています。
馬と一緒で牛にもサラブレッドがいて、その食べて美味しい血統を
探して仕入れています。その中で、宮崎県の牛が一番美味しかった。

滋賀県の牛ではないんですね!

橋場

そうなんですよ。滋賀県で子牛を買うこともあるんですが、
実は、滋賀県にはサラブレッドがいないんです。
そもそも、滋賀県にはその種をつくる施設がなくて、
純粋な近江の血統を生み出せないのが今の課題です。

そうだったんですね。

橋場

だから今、うちでは近江牛を作っているという意識よりも、
自分が思う美味しい牛を作ることに注力しています。

実際、最近は個人の名前で牧場をやられてる方も多いですもんね。
橋場さんもそうお考えですか?

橋場

そうですね。イメージとしては、”橋場牛”。
特にうちのおやじさんが、早いうちから味にシフトしていましたので、
食べる物にはすごくこだわっていて、餌はうち専用のオリジナルです。

オリジナルの餌で育つ牛には、どう言う特長があるんですか?

橋場

基本的には、食べておいしい牛です。
見た目や形など様々な要素がありますが、食べて美味しい脂質、
胃がもたれない上質な脂を作るための餌を開発しました。

滋賀県内ではいちばん高い餌を使っているんじゃないかと。

牛は、一日にどれぐらいの量の餌を食べるんですか?

橋場

1日10kgです。

10kg!?

橋場

だいたい、一頭750円ぐらい。結構贅沢してるんですよ!
節約してるお父さんよりも良いもの食べてます。笑

ほんとだ!笑 ここにあるだけじゃ足りないですよね?

橋場

全然足りないです。500kgの山が2つと、200kg弱の山が1つ。
藁も半年ぐらい寝かせてからでないと使えないので、
毎年藁のストックを蓄えてます。

大切なのは、優秀な血統だけじゃない。

ここにいる牛達は、すごい人懐っこいですよね。

橋場

牧場行って、牛寄ってこない牛舎は牛にあんまり良くないと思ってます。
人に慣れていないんだと。

なるほど。

橋場

牛一頭一頭にも表情があって、
それを毎日確かめるだけでもだいぶ違うと思うんです。
調子悪い牛は顔を見ればすぐにわかるんですよ。

人間と同じ、生き物ですね。

橋場

大前提として、サシが入るということは
牛に無理をさせているんんです。牛はストレスを感じやすく、
とても繊細な生き物なので、出来るだけストレスを
抱えないように育てる環境には気を付けています。

だから、子牛を買う時から顔を見て買うことが多いですね。

優秀な血統よりも、元気な牛ということですか?

橋場

はい。血統がいくら自分好みでも、
顔に活力がなかったりすると買わないですし、
お目当の血統でなくても、
人懐こい牛は、ついつい買っちゃうことが多いですね。

ここにいる牛達は、肥育期間は皆一緒ですか?

橋場

いえ、いろいろいます。10ヶ月~20ヶ月くらいまで。
出荷が集中しちゃうので。

ほんとですね!背中の幅が全然違う。シュッとしてますね。笑

橋場

こっちの牛はまだ来て2ヶ月ぐらいなので、
合計でも9、10ヶ月ぐらいですね。平均で300kgぐらいです。
さっき見た大人牛で800kgほどですかね。

ちなみに、うちのおやじさんと僕だと買う牛の好みも違うんですよ。
人によって全然違います。笑

へぇ~!おもしろい!

育てる責任、食べる責任

普段から牛は鳴かないものですか? とっても静かですよね。

橋場

何かあったときにしか鳴かないですね。
餌がなくなったときとか、水の機械が壊れている時とか、
あとは、他の牛が出荷されるときは皆で鳴きますね。

え~!驚 やっぱり仲間意識があるんでしょうか。

橋場

新入りが入ってきたときも鳴きますが。笑
興味があるんでしょうね。基本はすごい静かです。

このお仕事に就かれてから、大きな苦労や事件ってありましたか?

橋場

やっぱり、生き物なので死んじゃう時があるんですよ。
それが一番しんどいです。どうしようもない事故もありますし、
自分の責任で病気の進行の発見が遅れたり…割と突然死も多いです。

突然死。病気じゃなくてもですか?

橋場

病気の時もありますが、体が大きくなりすぎると、
自分の体重を支えきれず、立てなくなっちゃうんですよ。
立てなくなると、胃の中にガスが溜まって死んじゃう。
”鼓腸(こちょう)”って言うんですけど。
多分、牛の死因で一番多いのはそれじゃないですかね。

橋場さんご自身の経験で、記憶に残っていることはありますか?

橋場

あ、一回だけ。
子供の頃、すごく懐いていた牛が一頭いて、
背中に乗っても怒らない牛がいたんですよ。
その牛が出荷されたその一回だけ、泣いた記憶があります。
名前もつけてないので、耳に値札がついていて。

その後、たまたまその牛の”ヒレ”がうちに来て、
皆で食べたんです。それがめちゃくちゃ美味しくて。
幼いながらにそれが全てだと悟りましたね。

すごい。。。生きてる中でもまたとない経験ですね。

ご自宅でもお肉は食べるんですか?

橋場

よく食べますね。
うちは一番食べてるんじゃ無いですかね。

橋場さんから頂いたお肉、みんなで山菜すき焼きをして美味しく頂きました。格別でした。

食べないと味が分からないですもんね。

橋場

そうなんですよ。美味しいかどうかは絶対確認しないと
ダメだと思ってますね。自分の育てた牛なので、当たり前のこと
かもしれないんですが。出荷した牛を買い戻して、味を確かめています。

今のお仕事のやりがいとは?

橋場

思い通りに行ったり、行かなかったり、それが面白いです。
この血統と、この血統を組み合わせるとどんな味になるのか。
両親の血統、祖父母の血統、そこまで見て、組み合わせを考えます。
かなり長期戦ではありますが、その過程が今の仕事の面白み、やり甲斐につながっています。

牛舎に記されている、牛の父母、祖父母の血統。

仕事を楽しまれていると言うことが、とても伝わってきます。

CATEGORY | 滋賀

新たな家族経営の形。【前編】/ hashibafarm : 橋場芳秀さん(35)

2021.03.01 writer | シガだね編集部